誰かが「史記と十八史略を読めば中国史は分かる!」と宣っていました。それが本当かどうか分かりませんが、小生も東洋史ファンを自認しながら史記をきちんと読んでいないことに思い当たり、この際一念発起して読み始めることにしました。
さて、史記の邦訳にも様々なものがあるようですが、ちくま学芸文庫の本シリーズは、ほぼ完訳に近い内容であり、訳文も東亜同文書院系の小竹兄弟によるもので比較的読みやすいと言えると思います。
本書は、歴代皇帝等の事績を紹介する「本紀」の部分です。五帝から漢の武帝に至るまで、大まかな政治史の流れを概括しています。いろいろな見せ場が登場しますが、やはり項羽と劉邦の楚漢相争の物語は中国史上の一大クライマックスと言え、「鴻門の会」のくだりなどは手に汗握る迫真の描写です。
他方、致し方ないことながら、マイナーな地名・人名がやたらたくさん出てきますので、一気呵成に読み進む、というわけにはいかないようです。
史記は言わずと知れた天下の名書であり、評価を下すのは畏れ多い限りですが、一般の歴史ファンが読んだ方が良いか否かという観点から、星を4つ付けることとします。
史記は列伝にあり、と良く言うけど本紀や世家も充分楽しいです。
東周時代を題材にしたものを読むなら、
どの姓の一族はどの聖王(賢人)の末裔なのか知っていた方が楽しめるし
西周くらいまでは神話のようなものなので、気楽に読めるでしょう。
それでいて、周の興業のとき、譜代の功臣は燕や斉とかの遠方に配されたこととかから、そこはかとないリアリティを
感じるのもおもしろいです。
列伝に比べて古代中国の封建制がどんなものなのか、当時の
(もしかすると漢代のかもしれないけど)常識や信条についても
細かく述べてありとくに東周期を知る上での基礎知識を養うこともできます。
秦漢期については、これは楽しむためにあるようなものです。項羽のくだりは本当に物語のようです。
これは列伝にも言えることですが、太史公曰く、で司馬遷の意見を
知ることができるのも良いです。
どこか厭世的な空気を感じるコメントが彼自身の人生を反映しているようで
史記自体が司馬遷という人物の人間性をよく伝えており
そこがまた興味深い点です。