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定価 : ¥ 1,260
販売元 : 新潮社
発売日 : 2004-02-18 |
鉄道紀行作家の宮脇氏の遺作。司馬遷の書いた歴史書「史記」を、読んでみたいが時間がない人のためのとっかかりの書。
史記の世界を会社の人間関係や人事の不満など、現代日本に置き換え「いつの時代にもこういう嫌な上司はいるものだ」などと身近な話に大胆にまとめてしまう。会社員ならわが身を顧みてぜひ読んでみたい1冊。
史記は言わずと知れた歴史的名著である。大胆にもそれを「つまみぐい」せん、とされた宮脇さんの真意はいかに?
この本は十三の章からなり、それぞれが史記のテーマの宮脇流解釈になっている。
それを学校の授業にたとえれば、史記の原文は数学の定理、宮脇さんはそれをひもとく数学教師、我々読者は無垢な生徒である。宮脇先生は史記の普遍性を自身の人生経験に当てはめるという例題を介して我々生徒に解りやすく教えてくれる。そして十三個の例題を解き終えた我々は、最後に史記のもつ絶対ともいうべき普遍性に気がつく、という壮大かつ完璧な仕組みなのだ。ここに至って我々は、史記こそ「人類普遍の定理」であると気づいた自分の姿を発見する。
宮脇先生はいつもの通り飄々と、さりげなく、無垢な生徒たちを史記の世界に旅させる。それは、どこか数学的な時刻表という数字の羅列からいくつもの鉄道紀行を企てたあの手法と似ている。
純粋な我々は、迂闊にもここで史記をマスターしたと勘違いしてはならない。「つまみぐい」は本来行儀の悪いものである。だが、誰もが「つまみぐい」でき、これほど幅広く役に立つ史記をぜひ自分の人生に応用してほしい、そうすれば史記がどれほど自分を助けてくれるかも判るだろう、というのが教壇に立つ宮脇先生のメッセージだからだ。
優秀な生徒であれば、自分で史記を読んで人生に照らし合わせてみるだろう。それは宮脇先生への報恩にもなるのである。
著者の遺作が、一周忌を前に発刊された。タイトルからして、ヒットを連発した名編集者でもあった著者の面目躍如といったところ。中身も格調高い名文で、小さくわかったふうにまとめないことや、変に読者におもねらないところなども小気味よい。著者をよく知るファンならば、著者自身のエピソードにニンマリする箇所も多い。ただ、著者が鉄道好きで紀行文に秀でた作家であったこと、中央公論社で常務まで務めた名編集者にして、古今東西の歴史に通じた碩学であること。この点を知らないと、史記のエピソードに唐突に挿入される著者の体験談にちょっと面食らってしまうだろう。これは著者の責任ではなく、編集者の責に帰すと思うのだが、ぜひ著者年譜を付けてほしかった。阿川氏もわざわざ著者の人となりを紹介してくださってはいるのだが、それだけではわかりづらいと思うのです。