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定価 : ¥ 903
販売元 : 中央公論新社
発売日 : 2003-11 |
司馬遷の旅を著者と辿る。西安近郊の遷の故郷の茂陵から始まり、長江や江南、山東への旅。地図や写真が要所に入れられて解りやすい。刑を受けた司馬遷が政治に翻弄されて自殺した楚の屈原らに同情して書いているという、また秦の始皇帝や武帝が中国を巡って何をしていたのか、その時代の人々の考えや感情を辿る、など興味深く読んだ。ここから更に深く中国史や人物、広い中国の街々や山河を理解したいという思いに駆り立てる本である。沢山の人物の名や地名が次々出てきて読むのには努力がいるが、挑戦あるいは呆け防止と考えるのも良い。
著者は司馬遷研究の専門家であり、特に当時の社会背景を重視して『史記』を読み解いていこうというスタンスを取っている。
本書でまず問題となっているのは司馬遷の生年である。紀元前135年か前145年か。著者によれば、この問題は司馬遷が20才のときに行った大旅行を分析することで結論を得ることが出来るという。つまり、旅を行ったのは前115年なのか、それとも前125年なのか、時代状況と摺り合わせることで解決へと迫ったのが本書なのである。
著者自身が司馬遷の足跡をたどり、各地の風物・歴史が『史記』の内容と絡めて紹介される。前115年と前125年で、その地の様子はどう違ったか。読み進めるうちに司馬遷の旅の背景がはっきりと浮かび上がってくる。
しかし、決して読みやすい本ではない。というのも、読者が『史記』に精通しているとの前提で本書は書かれているためである。まったく説明なしに登場する人物名、地名、事件名。固有名詞の洪水といってもいい。新書ではあるが一般読者向けではなく、専門家が息抜きのために読む本と言えよう。
「史記」の著者司馬遷は、20歳から10年間の間に7回中国内を旅行したと筆者は規定しているが、その7回の旅を紙上で再現し、何の目的で、どういうルートで、何を見、何を考えたかを追求したのが、本書である。
二千年前の旅を追求するといっても、基本的には、「史記」や関連史料が材料なので、必然的に、「史記」そのものの内容の大まかな紹介にもなっている。だから、本書は読者に対する「史記」の案内という性格を持っている。
もう一点は、筆者が、司馬遷のたどったルートを実際に旅行していることであり、本書には、筆者が撮影した写真と地図が結構収録されている。だから、本書は、「史記」の遺跡をたどる旅行ガイドブックの性格も一部は持っている。
以上2つの性格を持つ本書はユニークであるが、実際読んでみると、「史記」の内容を知らないと分からない地名・人名が出てくるので、なかなか初心者向きの本とは言いにくい。新書の制約だろうが、上下2巻ぐらいに分けて、「史記」の物語をあいだに入れたりするとかなり分かりやすくなるのではないか。写真をカラーにすればもっと良いだろう。