本書は、北京原人の昔から戦国末期に至るまでを対象に、中国の政治・経済・社会・文化等の歩みを概括的に説明するものです。中華文明と称される文化パターンの原型が形成されていく過程を覗き見するようで、知的興味をソソラレル本です。
さて、殷周革命や春秋戦国期の政治史には「史記」等でお馴染みのメジャーな歴史イベントが目白押しですが、本書はその手のエピソードを必要最小限に抑えています。太公望や重耳、合従連衡や戦国四君などなど、そうした派手なお話は「お義理」程度に登場するだけです。その分著者たちが力を入れているのは、それぞれの時代の政治的意義や社会・経済の発展状況、更には社会思想といった側面への分析です。一般向けの概説書ですが、けっこうハード志向の内容です。
そうした意味で、「地味で堅苦しい」というイメージを持つ向きもあるでしょうが、歴史を通じて中国の何たるかを知りたいと願う人たちには、本書から学ぶべきことが多いように思います(ただし、学ぶべきことが多いだけに読むのは骨が折れます)。
注文を付けるとすれば、やはり対象となる時代が長すぎる点でしょうか。東周列国伝のような世界を期待して本書を手にする読者もいることでしょうに、先ずは化石発掘や考古学の話を延々読まなければならないというのは、本の作り方としてどうなのでしょうね。
講談社がかなり以前出版していた『中国の歴史』全十巻本に、現在最新の研究成果を反映させて学術文庫で復刻しているものの第一巻目である。現在(2003年)この本の他に「秦漢帝国」「隋唐帝国」「魏晋南北朝」「モンゴルと大明帝国」「大清帝国」が復刻、出版されているが、この「古代中国」は読みこなすに一番難しいものではないだろうか?
まず構成に難がある。北京原人が出てくる生物学に関わる分野、幻の夏王朝、最初の王朝と確認されている殷王朝など考古学に関わる分野、孔子・孟子・老子・荘子・墨子・孫子・韓非子などを輩出し、中国思想の基礎を確立した春秋戦国時代の歴史学が担当する三つの時期を一つの本に押し込めてしまう。北京原人や夏・殷王朝などの先史時代をひとつにまとめるのは、何とか我慢できるにしても、あれだけの思想家を輩出し、政治の面でも多くの文献が残っている春秋戦国の歴史時代は一つの本でひとまとまりにした方が良かったのでは、と感じてしまう。
とはいえ、所詮復刻本、昔に企画された本を蘇らせたものだから、そんな文句をつけても仕方がない。人によっては、この本を読みとおすには、中国における人類学、考古学、古代史の他の参考書を先に読んでおく必要があるかもしれない。