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定価 : ¥ 2,730
販売元 : 講談社
発売日 : 2005-04-16 |
講談社の中国史新シリーズの第2巻、対象は殷・周・春秋戦国の各時代です。気が付いたことは以下の点でしょうか。
(1) 殷から戦国に至る時代の流れを、新石器時代以来の地方的文化圏が徐々に社会統合されて都市の連合体となり、戦国時代に至って文化圏ごとの中央集権が達成される過程として捉えます。旧石器時代の文化的影響に重きを置く視点で、たいへん興味深く読みました。
(2) 史書の記載内容は必ずしも信用できない点を強調し、史実の選別について厳しい姿勢をとっています。その分、暦法の整理による歴史の復元などにつき比較的詳細な説明が加えられています。
(3) 春秋の各バージョンや「五覇」の概念が生み出された政治的・思想的背景につき、興味深い意見が主張されています。
(4) 時代のイメージをガラッと変えてしまうような新鮮な見方が数多く提示されている一方、この時代の主な出来事や、それらの後世への影響など、いわゆる概説書チックな内容については極めて手薄と言わざるを得ません。
(5) 著者は本書の中で、自分の書くものは従来の通説と異なるので分かりにくくなる旨を述べておられます。そうした事情もあるのでしょうが、本書はハッキリ言って難解です。著者独特の用語法や文章の論理構成にも原因があるように感じるのは、果たして小生だけでしょうか。
いずれにせよ、本書を読んで面白いと思いましたし勉強になったことも事実です。が、一般向け概説書として人さまにおススメできるか否かは微妙なところです。
ひらせ氏の語る古代史はエキサイティングの一言に尽きる。
中国古代史の常識を、しかも基礎文献たる史記の段階から覆すからだ。
中国史にはちょっとうるさいぜー、という人ほど、インパクトは強いだろう。
導かれる結論は飛躍しすぎているという印象も受けるだろう。
とはいえ思考実験としては非常に興味深いものであり、中国古代史学をかじったことのある人には見過ごせない提言でもある。
ただ惜しむらくは「中国の歴史」という概説書のシリーズとしてはまったく不適であるとう点だけは指摘しないといけないだろう、初心者お断りどころか、中国古代史の年表をある程度そらで書ける人でないとついていけないこと請け合いだ。
本書の帯に「中国を知らずに世界は語れない」とあるが、私は本書に上の言葉を贈りたい。
たとえば 本書72ページに「紂はすでに倒れた兵をもって戦い、武王と開戦した」とあるが、『史記』の原文「紂師皆倒兵以戦以開武王」は「紂の軍はみな兵器を逆にむけて戦い、武王のために(道を)開いた」という意味である。
189ページに「太公が注視すると、」とあるが、『史記』の原文は「太公往視」で「太公が往って視ると」である。仮に「往」を「注」と見間違えたとしても、こんな有名な文句を間違えるプロがいるとは、俄には信じられない。
同じページに「龍を増やして食することができなかった。」とあるが、原文「不能食」はいうまでもなく「飼育することができなかった」である。「食」を「くらはす」と読むのはセンター試験レベルの漢文だ。
67ページの『逸周書』からの引用(翻訳)に至っては、そもそも原文に句読さえ切れていないことが明白なデタラメさ加減。
筆者は中国史の大家ということだが、本書のほとんど全体に上記のような低レベルの誤引・誤訳が散見し、正直なところ、読むのが苦痛であった。思うに、著者は原文を書き下さず、誰か助手に丸投げしたのではなかろうか(仮にそうだとしても、せめて高校レベルの漢文くらいは読解できる助手を使うべきだろうが)。
本書に述べられている新たな歴史理解とやらが正しいのかどうか、私には判断できない。しかし少なくとも、原典資料をマトモに読んでいない者が唱える説を信じるほど、私はお人好しではない。