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横山 宏章

中華民国―賢人支配の善政主義

中華民国―賢人支配の善政主義

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定価 : ¥ 861
販売元 : 中央公論社
発売日 : 1997-12

価格 商品名
¥ 861 中華民国―賢人支配の善政主義
革命と伝統と

 本書は、辛亥革命から人民共和国成立までの約40年間を対象に、民国激動の歴史を簡潔かつ平易に解説するものです。
 筆者は辛亥革命の性格に関し、社会・経済体制の変革という意味での「revolution」という側面のほか、伝統的な王朝交代論理としての「易姓革命」としての側面があり、この両者の絡み合いが民国の政治史を複雑かつ流動的なものにしたとしています。孫文と宋教仁、北洋政府と国民政府、国民党と共産党など、民国史を彩る様々な対立軸をそうした視点から分析してみると確かに面白いかもしれません。
 また、この易姓革命的な側面は、伝統的な社会・文化意識が辛亥革命後も大きな意味をもち続けたことをも意味するようです。孫文は徹底した愚民観の持ち主であり、賢人集団の前衛たる国民党こそが中華の民の救世主の役割を担うべきと考えていたとのことですが、これも伝統中国における士大夫階級の「先知先覚」としてのエリート意識と通じるものがあるようです。現代中国の共産党一党支配についても、「賢人支配の善政主義」は正統性の論理として無縁ではないように思われます。
 辛亥革命や共産革命といった大変革を経てもなお、三千年来の伝統的価値体系には変わらない部分があるのだということでしょうか。「Old habit die hard」とはよく言ったものですね。
 いずれにせよ、オリジナリティの高い面白い本です。筆者の主張に賛成するか否かは読む人の判断ですが、様々な見方に触れるという意味で、多くの人に一読をおススメしたいと思います。

辛亥革命から共産中国誕生までの、中華民国時代の通史

偏らない立場、しっかりした資料批判に則った記述で非常に好感が持てる。看過されがちな孫文の権威主義的側面を炙り出す一方、悪名高い袁世凱が若い頃、康有為の変法運動に共感を示し、彼なりの愛国心・外圧への危機感を持っていたと指摘するのがその一例である。また『孫文中心史観』とも言うべき立場では、無視されがちな、十二年間正統な政権であった軍閥持ち合いの北京政府の役割の重要性、蒋介石による北伐戦争による北京政府からの政権奪取、国民党独裁の南京政府の成立を一種の「革命」と認識するのも著者が丁寧に資料を読んでいるからこそ導き出される結論だと思う。中華民国から人民中国まで、副題の「賢人支配の善政主義」という一種の大衆への愚民観が貫かれているという点が著者が本書を著すにあたっての基本的認識であると思われる。再読するたびに新たな示唆が得られる中国近現代史の良質の通史だと思われる。

得がたい本

政治的にも微妙な問題が多い問題を公平に、またずいぶんと明晰に書いている本です。また類書にあるような「引用だらけ、漢文だらけ」といった読みにくさもありません。また「天命」「善政」といった伝統的な中国権力者の言葉をさりげなく皮肉な意味に使っているところが心憎い限りです。エレガントですらあります。

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